病気やケガに対する治療というと、手術療法や薬物治療が主流としてあげられます。
その中でも代替理学療法の一つである炭酸浴についてご説明していきたいと思います。
炭酸浴とは
高濃度の炭酸(二酸化炭素)が解けたお湯に浸かることで、高濃度の炭酸が皮膚を通して体内に吸収されてその効果を発揮します。見た目には炭酸浴部位の身体に炭酸の気泡が無数に出現後、静脈血管の拡張と下肢が赤くなってくるのが認められます。
炭酸浴の歴史は
日本は温泉王国として一般的に認められておりますが、炭酸浴に関しては中世ヨーロッパより盛んに行われており、ドイツでは健康保険での温泉治療として認められています。
炭酸浴の効果とは
生理学的には主に末梢血管拡張刺激による血流増加、皮膚温受容器に対する作用、自律神経系に対する作用が報告されております。臨床的は末梢血流増加作用により動脈虚血の改善、褥瘡(じょくそう:寝たきりなどになるとお尻や腰、かかとなどに出てくる傷で治りにくい)の改善および関節痛や筋肉痛の軽減が得られています。
具体的にはどのような病気に効果があるのか
末梢動脈血流障害(閉塞性動脈硬化症、バージャー病)、褥瘡、高血圧症、慢性関節リュウマチ、一部の自律神経失調症が挙げられます。症状からみれば、下肢の潰瘍、運動後の下肢痛、しびれ、冷え症、関節痛に効果が認められております。当院では末梢動脈血流障害の改善を主として、臨床治療に役立ております。
炭酸浴をどのように治療法として使われるのか
炭酸浴は末梢血流障害や整形外科的筋肉痛、関節痛すべてに効くわけでなく、まずは病気の正しい診断のもと、従来からの薬物療法や手術療法の無効例やその適応とならない例に炭酸浴を試みられたり、または薬物療法や手術療法との併用することでその効果が認められます。
どのようにして炭酸泉が作られるのか
家庭用入浴剤として炭酸泉が作られていますが、その炭酸の濃度は治療用として使用されるまでの濃度には達しません。それゆえ治療に使用するためには特殊な機械を使用した炭酸泉を作る必要があります。また温水中の炭酸ガスの濃度が高ければ高いほど治療効果が上がるとされています。
どのぐらい炭酸浴をすればよいのか
はっきりとした基準はありませんが、ドイツの療養入浴法を参考にすると一回につき10-15分、週に3-4回を続けるとされております。また皮膚温から見た研究では、炭酸浴後5分から10分で著しい効果を認めております。
どのような人は炭酸浴に適さないのか
血管拡張作用が強く発現することと血中炭酸ガス濃度が上昇することから、重度の低体温症、心臓弁膜症、先天性心疾患、心筋梗塞早期、脳血管障害や呼吸障害(慢性気管支炎や肺気腫)や極度の全身疾患を持つ人は基本的には適さないことになっています。
最後に
本邦での治療法としての炭酸浴に対する研究は新しく、その効果、生理学的作用はまだ不明な点があるものの、今後さらに発展していくものと考えられます。